耳鼻咽喉科・アレルギー科 たなかクリニック院長がお答えします!
鼻について
【ちくのう症(副鼻腔炎)の治療について】たなかクリニック 院長 田中 斉
●ちくのう症って?
顔の骨の中にある空洞を副鼻腔といいます。
ここに炎症が起きた状態を”副鼻腔炎”といいます。
副鼻腔での炎症の結果として、膿や粘液が貯まる事が多いため、昔は【蓄膿症、ちくのう症】(膿の溜まる病気)と呼ばれました。
【蓄膿症】という言葉自体は、もともとは、ある体腔に膿がたまる病状を指しますから、病気の場所は副鼻腔に限らないのですが、昔は副鼻腔の炎症が圧倒的に多かったため、【蓄膿症】というと副鼻腔炎を指していました。
なお、副鼻腔炎には急性と慢性の病態がありますが、特に慢性の場合に”蓄膿症”という言葉が用いられました。
つまり、結論としては、ちくのう症≒副鼻腔炎ということになります。
(上でも述べたとおり、通常、副鼻腔炎に蓄膿症という言葉を使う場合は慢性の病態を指すことが多いのですが、炎症の程度がひどいときに判りやすい(か、印象に残って治療を進めやすい)ために、急性の病態であっても『(急性の)ちくのう』や『ちくのうになりかけ』という言葉を使われる先生もいらっしゃいます。)
●成因と病態
副鼻腔炎は基本的には細菌感染症ですが、ウイルス感染が先行することや鼻副鼻腔形態の異常が関与することも少なくありません。
つまり、副鼻腔炎の発症には複数の要因がかかわっています。その主なものは、感染、鼻腔内の形態、アレルギー、生活環境、遺伝などです。
これら諸々の要因が直接的あるいは間接的に関与して副鼻腔粘膜の分泌亢進や組織障害、さらに副鼻腔自然口の閉塞、換気・排泄障害が生じて急性副鼻腔炎が引き起こされます。
多くは自然経過のうちに、あるいは適切な治療によって治癒しますが、副鼻腔粘膜の炎症や貯留液の排泄障害が遷延化すると、生体内の反応によって炎症が慢性化し、副鼻腔粘膜の浮腫型、肉芽型、あるいは線維型の変化、そして鼻茸が生じて慢性副鼻腔炎の病態が形成されます。
●副鼻腔炎の症状について
急性の副鼻腔炎は”かぜ”に引き続いて起こる鼻と副鼻腔の感染症で、鼻づまり、ドロっとした匂いのする鼻汁、頬・鼻周囲・額の痛み、顔やまぶたの腫れ、発熱などの症状を伴うものです。
これらの症状が発症後1カ月以内に症状が消失するものを急性副鼻腔炎といいます。
これに対し、慢性副鼻腔炎は鼻や副鼻腔の粘膜の炎症が長引いて、ねばねばした、あるいはどろどろした鼻汁が鼻の中にたまり、それが鼻汁としてたれたり、喉に落ちたり、さらには鼻詰まり、頭痛、頭重感等といった症状を呈する病態を指します。
●治療について
副鼻腔炎の治療には、大別すると、薬物治療、鼻処置と局所療法,そして手術があります。
1) 薬物療法
慢性副鼻腔炎は急性増悪時でなければ,細菌感染の関与は少なくペニシリンやセフェム系抗菌薬を用いる必要はない、とされています。鼻茸などで中鼻道自然口ルート(OMC)が高度に閉塞されていなければ、12週程度の14員環マクロライドの少量長期投与法が有効です。
その他に、気道粘液調整薬や気道粘液溶解薬も用いられます。(これらの薬剤は単独投与では明確なエビデンスはありません。)
慢性副鼻腔炎では嗅覚障害を伴うことが多く、ステロイド薬の点鼻や経口投与が行われます。
2) 処置・局所療法
副鼻腔自然口開大処置により閉塞した中鼻道自然口ルート(OMC)を開大することで、副鼻腔洗浄などの処置が容易となり、ネブライザー用薬液の到達度も増強されます。
上顎洞穿刺・洗浄は急性期の重症例が適応となりますが、性副鼻腔炎の急性増悪や難治例にも有効な場合があります。
また慢性副鼻腔炎の術後処置としても副鼻腔洗浄は有用です。ネブライザー療法も副鼻腔炎に対して有効な局所療法です。
3)手術療法
保存的治療に抵抗するもの、中鼻道自然口ルート(OMC)に高度な鼻茸を認めるもの、マクロライド療法が無効なもの、好酸球性副鼻腔炎などが手術の適応となります。手術には鼻茸切除術、内視鏡下鼻内副鼻腔手術、副鼻腔根本術などがあり、最近では内視鏡下鼻内副鼻腔手術が行われることがほとんどです。
大阪・梅田・茶屋町の耳鼻咽喉科
たなかクリニック
院長 田中 斉
- アレルギー性鼻炎は治りますか?
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アレルギー自体は体質になりますので、基本的には一度アレルギー反応が起こるようになってしまうと治らないということになります。
減感作療法という治療が完全にアレルギーを治す唯一の方法となりますが、効果の程度や治療期間などを考慮すると万人にお勧めすることは出来ません。ただし、症状の緩和ということであれば方法がないわけではありません。(内服薬や点鼻薬の併用が一般的ですが・・・。) - 蓄膿症といわれました。どんな治療をするのでしょうか?
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蓄膿症は正式には慢性副鼻腔炎といいます。今はまずマクロライド系の抗生物質を1ヶ月~3ヶ月服用し、同時にネブライザー療法などを行う治療が一般的です。ただし、全例がマクロライド療法で治癒するわけではなく、3ヶ月経過してもレントゲン上の炎症所見が消えない場合は手術治療を行う場合もあります。個人的な意見としては、炎症所見が残っていても自覚症状が軽減していれば手術治療を行わなくてもよいのではないかと思っています。ただ、風邪を引いたりすると鼻の症状がなかなかとれない、とか鼻がノドに流れやすくてノドの痛みやイガイガした感じが長引く、といったことは起こりやすいと思います。)
また、左右どちらか一方だけが極端に悪く、虫歯などもない場合は、患者様の年齢などを考慮して手術をお勧めする場合があります。(腫瘍性病変の可能性や、真菌症(カビによる炎症)などが考えられるため、フツーの蓄膿症であるか確認するために手術を受けていただくことがあります。) - 少し前から鼻血が良く出ます。
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出血の程度にもよりますが、多く見られるのは鼻の入り口近くに出血を起こしやすい場所があり、鼻をかむ、などの物理的な刺激を受けやすい場所ですので、ここに傷がついて出血している場合です。
これは一番数が多く、心配の要らない鼻血なのですが、長引くこともあります。
基本的には鼻の中の傷も手足の擦り傷と同じように治りますが、鼻の中は皮膚と違って湿っていることもあり、かさぶたが付いてもはがれやすく、傷が治りにくいため、かさぶたがはがれて血が出るといったことが長く続くことがあります。 - 鼻血が出た場合にはどうしたらよいですか?
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基本的にはあごを引いてうつむく姿勢をとり、鼻に綿をつめて鼻翼(小鼻)をつまんでぎゅっと圧迫するのが一番です。10分~15分押さえ続ける必要があります。
ノドに血が流れてくるようであれば、飲み込まずに吐き出します(飲み込んでいると、後で腹痛を生じたり、吐き気がしたりします。)
これで鼻の入り口付近から出ている一般的な鼻血は止まるハズですが、とまらない場合は鼻の奥の方や、上の方などから出血している可能性があるため、耳鼻咽喉科で診察を受けていただかなければいけません。 - ニオイがわかりません。治す方法はあるのでしょうか?
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ニオイがわからない(=嗅覚障害)場合、一時的にニオイがニオイを感じる部位(神経)に届かなくてにおわない場合やニオイの神経自体がダメージを受けている場合があります。
後者の場合改善は困難です。また前者の場合でも、あまり長期間にわたると、ニオイの神経が萎縮してしまい、後者と同じ神経のダメージになってしまいます。
できるだけ早い時期に耳鼻咽喉科を受診していただくほうがよいでしょう。
治療としては、点鼻薬をニオイを感じる部分に届くようにさしていただく治療が一般的です。